ゲノムの再プログラム化とエピジェネティクス

     

     [背景]
        受精から始まる個体発生は、たった一個の細胞の細胞分裂による数十兆個への増殖と共に、巧妙に制御された細胞分化によって
       もたらされる。
この過程で、受精卵は、体を形つくる全ての種類の細胞に分化可能な多能性(万能性)が失われ、限られた役割を果たす
       べく特殊化した細胞へと分化そして老化してゆく。一般に、分化は後戻りのできないプロセスとの概念が固定されていた。我々は、
       多能性幹細胞(pluripotent stem cell)の一種である胚性幹 (ES) 細胞と体細胞を細胞融合すると、体細胞核ゲノムのエピジェネティクス
       が書き換えられ未分化細胞様に再プログラム化されることを世界に先駆けて発見した(Tada et al.(2001) Curr Biol.)。
        この結果は、分化細胞を直接培養条件下で多能性幹細胞に再プログラム化可能であること、またES細胞には体細胞の再プログラム化に
       必要十分な因子があることを示していた。現在では、ES細胞から同定された因子(Oct4, Sox2, Klf4 & c-Myc)の強制発現により体細胞が
       多能性幹細胞 (人工多能性幹(iPS; induced pluripotent stem)細胞)に再プログラム化されることが明らかになっている
       (Takahashi&Yamanaka (2006) Cell)。
        
多能性幹細胞の未分化性維持にOct4,Sox2,Nanogが中心的な役割を果たす転写因子として注目されている。


     [目的] 
       1) 体細胞が多能性幹細胞に再プログラム化されるメカニズム
       2) 再プログラム化に関わる因子の働き
       3) 再プログラム化の医学応用技術の開発

 
     [重要性]
        再プログラム化による個人体細胞からの多能性幹細胞の作製成功は、拒絶反応を伴わない移植分化細胞の医療応用の扉を開き、
       再生医療の現実性を高める大きな一歩である。医療応用に向けて、解決しなければならない問題に焦点を絞り、一歩一歩クリアーする
       ことで基礎研究の社会への貢献が実現できると信じている。再プログラム化における転写因子の働きは、その重要性を再認識させるのに
       充分である。再プログラム化メカニズムは、生命を次世代につなぐ仕組みを解き明かすための鍵と考えている。


      

 

多田  高(准教授) ttada*frontier.kyoto-u.ac.jp

藤枝 雅博(大学院生) mkameda*frontier.kyoto-u.ac.jp

勅使河原 利香(大学院生・RA) rteshigawarafrontier.kyoto-u.ac.jp

曹 準権 (大学院生・TA) jkcho*frontier.kyoto-u.ac.jp

福地 恵美(秘書) mfukuchi*frontier.kyoto-u.ac.jp