Department of Organ Reconstruction, Field of Clinical Application,
Institute for Frontier Medical Sciences, Kyoto University

研究概要スタッフ業績一覧関連学会MapリンクEnglish再生医科学研究所TOPへHOME

本分野では、膵島細胞を用いたバイオ人工膵の移植応用を主研究テーマとしている。

我が国においても糖尿病の罹患患者数は推定690万人、潜在的患者を含めると実に1,370万人にものぼると考えられている。この疾患は腎機能障害や網膜症による失明など深刻な合併症を伴う場合が多く、また、罹患患者はもちろんのこと、家族の負担や医療費の増大など多くの社会的問題をも抱含している。現状では食事療法や体外からのインスリン補充療法などが行われているが、このような対症療法だけでは合併症の発症やその進行を阻止し得ない場合が多く、根本的かつ普遍的な治療法の確立が緊急課題となってきている。欧米においては、根本的治療法として膵臓器移植や膵島細胞移植も行われているが、他の臓器移植の場合と同様、深刻なドナー不足と免疫抑制剤の長期使用による副作用の問題があり、糖尿病に対する根本的な治療法の開発は緊急性の高い課題と位置付けられている。
一方、機能障害、欠損や不全に陥った生体組織・臓器に対し、細胞を積極的に利用することでその機能再生、あるいは、再構築をはかる再生医学に対して注目が集まっており、膵臓器移植や膵島移植においても付随する種々の問題を解決し得る最も有力な方法が再生医学を応用し開発したバイオ人工膵による膵島細胞再生医療であるとも考えられている。

1. 移植レシピエントに係わる問題
元来血管の乏しい皮下部位において、ポリエチレンテレフタレート(PET)メッシュを素材とする塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)徐放デバイスを移植に先立ち処置することで組織学的検討でも、組織中のヘモグロビン量や血流量を指標とした評価においても良好な血管新生誘導が認められ、また、腹腔内移植の場合にもPETメッシュを移植細胞支持体として用いるだけで血管新生誘導が可能であることを観察している。さらに、糖尿病モデル動物を用いてこれら前処置後に移植した膵島細胞の生着や機能性(血糖値の正常化など)が向上することを確認している(同種同系、同種異系、および、異種移植)。また、これら皮下移植に加え、腹腔内移植、さらには、皮下と同様に血管の乏しい筋間への移植においても糖尿病モデル動物へ移植した膵島細胞は機能しており、血管新生誘導処置の有効性を確認している。

2. バイオリアクターに係わる問題
コラゲナーゼ消化法を応用してラット、マウスからイヌに至るまで、各種動物からの安定的な膵島分離法を確立している。なかでも、臨床応用性、動物愛護、さらには、繁殖性の点から最も有用性が高いと考えられている成熟ブタ膵島や若齢ブタ膵内分泌細胞の分離法の確立にも成功し、これら細胞の機能(インスリン放出能や膵内分泌細胞特異的なホルモン類の検出)、さらには、移植細胞の生着や機能性を確認済である。

3. 移植後生体変化に係わる問題
膵島細胞移植において、移植後の炎症反応や免疫応答により移植細胞の生着が阻害されたり、機能性が低下するなど大きな障害が観られる場合が多い。この点に対し、移植膵島細胞の支持体に免疫隔離能力を持った物質を選択し、これらの応用に関して検討を実施している。すでに、アガロース(ag)を用いたマイクロビーズやagとポリスチレンスルホン酸(PSSa)に封入した膵島細胞が移植後、長期にわたり機能することを確認している。


E-mail: inouelab@frontier.kyoto-u.ac.jp